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リレー小説
千葉大学文藝部で行っているリレー小説を公開しています。
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DATE: 2013/02/27(水)   CATEGORY: テーマ:月
リレー小説 九
2/27更新                 執筆者 鈴木亮さん

「*#$&+@~~~!」
キメラの叫びを皮切りにして、1体の怪物がサトウに襲いかかってきた。サトウはなんとかかわしたが、すぐに別の怪物から一撃を食らった。
相手の攻撃が妙に弱い。サトウは変だと感じた。すると今度は別の怪物が攻めてきて、サトウの体を柱に打ちつけた。その威力の弱さから、サトウは感づいた。
 ……こいつら、遊んでやがる。

 サトウは怪物たちにもてあそばれた。一発目をかわし、ニ発目をかわしても、いつかは当たってしまう。数が多すぎるのだ。
いよいよ俺の人生も終わりか。サトウは思った。大学を卒業してからの堕落した生活。金目当てで引き受けた仕事。ろくな人生じゃなかったな。まさか全て仕組まれていたとは。
 サトウはこの世の不条理を感じた。しかし今のサトウには怒りや憎しみといった感情はなかった。そこにあるのは、早く終わりにしてくれ、という虚しい感情だけである。そしてサトウはもはや避けるのを止めていた。
 ついにサトウは倒れてしまった。遠のいていく意識の中で、キメラが、もう終わりだと言わんばかりに叫ぶのが聞こえた。そして、怪物たちが一斉に襲いかかってきた。サトウは死を受け入れ、目を閉じた。


 ……時が止まったかのような静寂が訪れた。サトウが恐る恐る目を開けると、そこには怪物たちの姿はなく、先ほどの戦闘が嘘のようである。そして、どういうわけか、神殿の柱がオレンジ色に光っているのだった。
 突然の、そしてほんの一瞬の出来事にサトウは困惑した。やつらはどこへ行ったのだろうか。そしてこの光る柱は一体何なのか。
 ここは異次元の月の海。何が起こるか見当もつかない場所だ。悪いことだけでなく、良いことも起こるだろう。絶体絶命で万事休すな状況からの形勢逆転。これもあり得なくはない。しかし今起こったことは、サトウには出来過ぎているような気がした。

 サトウは立ち上がった。体は痛むが、動けないほどではない。神殿の柱は柔らかいオレンジ色に輝いていて、この空間全体が暖かく感じられる。サトウが柱に触れると、指の先から暖かさが伝わってきた。まるで朝が来たようだ。サトウはそう感じた。
 これからどうすればいいのか。サトウは目前に広がる幻想的な空間を眺めながら考えた。正直言うと、もう地球へ帰りたかった。武器も仲間も失って、たった一人で何ができようか。サトウは途方に暮れた。

 サトウは考えた。ここでまた奇跡を待っていてもしょうがない。任務を遂行すること、すなわち海の深部へ侵入し、宝石を手に入れること。生きて帰るためにはこれ以外方法はない。そして、死んでいった仲間のためにも。こう決心すると、サトウは一際輝く神殿の中心へと向かって歩いていった。


 神殿の中心に着くと、そこには周りのものより少し太い四本の柱があり、その真ん中に大きなオレンジ色のものが浮いていた。それはぼやけていて質量のある物体のようには見えず、まるでオレンジ色の霧が球体の形で漂っているようである。
 サトウが手を触れようとすると、手はその中へと吸い込まれた。内側はこちら側とは違ってひんやりとしている。どうやら中へ入ることができるようだ。サトウは驚きもしなかった。何が起こってももはや不思議ではない。そう思うと、サトウは躊躇せずに中へと入っていった。



 NASA日本支部。
「こちら1986-DSMR2。目標は海の深部へ侵入しました」
「そうですか。わかりました」
「次に本部からのメッセージが一件あります。再生しますか」
「お願いします」
「了解しました。……『君のおかげで全ては計画通り順調に進んでいる。この調子で頼む』……以上でメッセージは終了です」
「わかりました」
那須野はそう言うと、窓から明るい望月を眺めた。
「計画通り? いいえ、未来は誰にもわからないものですよ」

 外では、夏の虫が街灯の光に群がっていた。



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