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リレー小説
千葉大学文藝部で行っているリレー小説を公開しています。
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DATE: 2013/04/04(木)   CATEGORY: 未分類
リレー小説 十一
4/4更新                 執筆者 かつどんさん

「さて……。」
と、男―正確には彼の搭乗したNASAの遠隔操作型戦闘機―はサトウに銃口を向けつつ言った。
「ここまで話してしまった以上、当然だが君にはここで死んでもらう。だが一つ、気になる事があってね。君は我々より先にこの空間に居た。だが、本部から君ら実験体がここにたどり着いたという報告は来ていない。それどころか、デイジーの話によれば君はこことは別の地点で複数の怪物に襲われたそうではないか。一体、君はどうやってここまで来たのだね?」

「……」
サトウの答えは沈黙だった。最早彼は口を開くのも億劫になっていたのである。自身の死が不可避となったからではない。成功した暁に支払われるという莫大な金額、それだけを支えに、彼はここまでやってきた。だが、男たちが『海』の核を回収するのであれば、それが実現されることはありえない。サトウは自分を支えてきたたった一本の柱がポッキリと折れてしまったのを感じていた。
「答えてはくれないか、残念だよ。では、さらばだ。」
 男は大して残念そうな様子も見せずにそういうと、銃の引き金に指をかけた。サトウの思考は靄がかかったようにはっきりとせず、自分を殺そうとする男を虚ろな目で見ていた。

『その疑問は私が解消しよう。』

 突然、空間に得体の知れない声が響き渡った。男はすぐさま銃口をサトウからはずし、声のしたほうに向けようとしたが、その不思議な声は空間全体に反響するように届いたため、やむなく彼は周囲全体を警戒し始めた。
「誰だ!」

男は叫んだ。
「どこにいる、姿を現せ!!」

『そう焦るな、今そちらに向かうさ。』
またも声がする。今度ははっきりと聞こえた。空間の中央、石柱群の方からだ。男はすぐさまそちらに銃口を向けた。サトウの視線も同じほうを向く。
 すぐに、一本の柱の影から何かが姿を現した。それは、輪郭こそ人間のそれに限りなく近く、大きさも人間のそれとほぼ変わらなかったが、上から下まで均一的に見える表面は異様にのっぺりとしており、色は全身海のような深い青に染まった、紛れもない異形の持ち主だった。顔の各パーツは皮膚の凹凸だけで表現されており、なんとも表現しがたい異様な雰囲気を醸しだしていた。
「何者だ貴様!」 男が怒鳴る。その指は銃の引き金にしっかりとかかっており、即座に発砲できる状態だった。突如現れた「何か」が口を開く。
『私か。私は、君達が『海』とよんでいるモノの核だよ。……ふむ、どうやら君たちとコミュニケーションをとるのはこの方法で正解のようだな』
男の顔が驚愕の一色に染まった。
『とはいえ、核そのものではないよ。私は、君たちとコンタクトをとるために核から精製された、いわば分体のようなもの、と言えば理解してもらえるかな。』
「……なるほど。」
と男は呟いた。先ほどの動揺からすばやく回復し、現状を把握したようだと、サトウはぼんやり思った。
「貴様の言いたい事は理解できた。私とコンタクトを取るためにきたと言うなら都合がいい。二、三質問させてもらうぞ。

どうやら彼の中ではサトウの存在はなかったことになっているようだ。
「貴様は『海』の核であるといったな。と言うことは、『海』自体が生きているということなのか?それとも……」
『……よかろう、その疑問も私が解消しよう、だが、その前に』
 彼がそういった瞬間、男が突然いぶかしげな顔をして耳に手を当てた。
「本部との通信が切れた!?いや、この体を動かせるのだから通信は生きているはずだ。だが、これは……?」
『なに、通信をきったのではなく、こちらの様子がどこかに伝わらないようにしただけだよ。』
「な、なんだと!?」

男の狼狽する様子を気にする事もなく、彼は喋り続ける。
『さてと、要するに私が何者か、君らが『海』と呼んでいるここは何なのか、が知りたいわけだな。簡潔に言うと、……む、君らの言語には私を表すのに適切な単語が存在しないな……やや分かりづらくなってしまうが、私は、いや我々は、月面人が更に進化したような存在だ。君ら地球人類から見れば遥か高みに到達ある種族だ……自分で言うのも何かおかしいが、君らの視点から説明するとしたらこの物言いが一番であろう。』
若干ではあるものの回復しかけていた筈のサトウの思考回路はまたも動作不良に追い込まれた。「彼」の言っていることを瞬時に理解できる人間など居るはずないと、サトウにはそう思うのが精一杯であった。
「な、何を知ったようなことを!」

 理解が追いつかないのは男のほうも同じであるようだ。動揺のあまりややちぐはぐな事を口走っている。
『すまんな。どうやら混乱させてしまったようだ。何分、空気の振動を用いたコミュニケーションなど数百年ぶりなのでな。大目に見てくれ。とりあえず君らの疑問を順番に解消して行こう。まず、我々の種族は思念波で直接コミュニケーションが取れる。それ故、君らの頭の中を除く事も可能なのだよ。先ほど君は『知ったような口を』といったが、実際に知っているのだから仕方あるまい。』
「な、な、な、…………」
『更に言うと、我々は種族全体の意思と肉体を一つに統一居ている。我々に我々と私の境界線など存在しないのだよ。残念だがこのあたりの感覚を、未だに個人という概念に固執している君らの言語で正確に説明するのは不可能だな。』
『次に、一つ前の疑問に対する答えだが、だが、ここ、『海』を作ったのは私だ。この空間も、外の迷路も、キメラも私の手によって産み出されたものだ。何故そんなことをしたのかって?そうだな、端的に言えば、退屈をしのぐためさ。』
今度こそ、一瞬ではあるが、確かにサトウの思考は完全停止した。「彼」の言葉はあまりにも理解するのが難しすぎた。
『我が種族がこの状態、つまり全個体の意識と肉体を統合した状態になってからは、数えるのも億劫になるほどの時間が経っていてね。』
「彼」は更に続けた。
『正直退屈でたまらないのだよ。思いつく限りの退屈しのぎは全てやり飽きてしまったし、意識を個体毎に再分割すれば議論と言う形で長時間の退屈しのぎは実行できそうだが、何分本来は一つの意識だったもので、所詮は一人遊びにしかならなくてね。ここ数百年は特に退屈していたのだよ。そんなところへ、君たち地球人類が月を移住先にするために調査にやって北ではないか。この機会を逃す手などあるはずない、きっとすばらしい退屈しのぎになる、私はそう思ったわけだ。そこで、このような施設を作って君たちを歓迎したわけだ。私としては大変素晴らしい退屈しのぎとなったわけだが、どうだい?君たちのほうは、楽しめたかい?』
「ふ、ふ、ふざけるな!!!」

いきなり男が怒鳴った。どうやら思考が追いついたようだ。
「たくさんの命を奪っておいて、退屈しのぎだと!?ふざけているにも程があるぞ!!」

『それがどうした?』
と、「彼」は平然と言ってのけた。
『たかが数十の個体の損失など、種族全体から見れば損害のうちになど入らないだろう?』
「貴様らの価値観など知ったことか!!」

『そうだろうよ、だから私としても君らの価値観を理解するつもりはないよ。元々我々からしたらとてもとても古い考え方がしね』
「こ、この……!!」

『さて、本来ならここでこの遊びは終わりにする予定だったのだが、君たちが予想以上に私を楽しませてくれたので気が変わってね。『海』の構造を一新してもう一度君らを迎え入れたいと思う。まあ、言わばセカンドステージといったところだな。』
「そんなことを、これ以上無駄に犠牲者がでるような行為をさせると思うか!?どのみち、ここで核を我々が抑えればそれで終わりだ!!」

『まあそうなるだろうな。だがその行為は阻止させてもらうよ。いや、ここに君たちが住む事自体に反対する理由はないし、むしろ歓迎したいのだがな。このままでは私の退屈が解消されない。それに、そうでなくてもステージリニュアールの際に中いる地球人は全員殺すつもりだった。そのためにそこに倒れている彼をここに呼んだのだからな。……かなり遠回りになったが、君の最初の疑問はこれで解消されたわけだ。納得してもらえたよな?』
「ふん、そんなことはいまとなってはどうでもいいさ。我々の目的の邪魔になるとわかった以上、貴様は排除させてもらう」
その言葉と共に、男と人工知能搭載型戦闘機が「彼」に銃口を向けた。
『まあここで対立が一つ生まれるのは必然だな。さて、君たちは私の退屈をどの程度紛らわせてくれるのかな?』
「彼」が挑発的な言葉を放ち、場の空気が緊張する。サトウは未だ回復せず、横たわったままだったが、どうやら彼らの眼中には入ってないようだった。
「やれ!」

 男の声が響くと同時、戦闘機が発砲を開始する。だが、それと同時に「彼」の姿も消えていた。そして、一瞬後には、戦闘機の一台が背後から「彼」の手刀に貫かれ、爆発四散していた。すぐ近くにいた他の戦闘機二台も爆風と炎、金属片の嵐に飲み込まれ、連鎖的に爆発していく。少し離れたところに居た男は、直撃こそはなれたものの爆風のあおりをくらって盛大に吹き飛び、サトウの近くまで転がってきた。
『どうした、この程度なのかい?』
「彼」の口から挑発的な台詞が飛び出す。男はやや焦った顔で銃を撃つが、「彼」は猛スピードで、最小限の動きだけで幾百もの銃弾を回避していく。数秒後、銃撃が唐突にとまった。どうやら弾切れのようだ。男は完全に恐慌をきたした表情で周囲を見渡した。ふとサトウと目が合い、男は叫びだす。
「き、貴様、何をぼさっとしている!あいつを倒せ!さっさと立ち上がらんか!そ、そうだ、金なら後でいくらでもやるぞ!!」

最後の一言が、サトウの心に再び火を灯した。ユラリと立ち上がりつつ、サトウはこういった。
「……その言葉、忘れるなよ。」
この時のサトウの顔にはうっすらと笑みさえ浮かんでいた。
『ほう、驚いたな。さきほどまで死者同然だった君が一瞬にしてここまで復活するとはな。一つの価値観をそこまで信じられる執念は賞賛に値するな。その証として、君の望み通り剣士として相手しよう。そして、剣士としての最後を君に与えようう。』
気がつけば、サトウの手にも「彼」の手にも、それぞれ一振りの日本刀が握られていた。彼らは全く同じように刀を中断に構えた。
「『はああああああっっっ!!!』」
二つの声が重なり、そしてサトウは、笑みを浮かべたまま刀に胸を貫かれて倒れ伏した。



月の『海』。地球の常識が通用しない世界。突然の消滅と言う形で二人を失ったNASA本部は、欲にまみれたその手で新たなる犠牲者を選び出す。

「三良坂七海さん、ですね?貴女にお願いがあってまいりました。」

           END
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| | 2014/02/15(土) 13:37 [編集]
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