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リレー小説
千葉大学文藝部で行っているリレー小説を公開しています。
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DATE: 2012/12/05(水)   CATEGORY: テーマ:月
リレー小説 三
12/15更新                      執筆者 こばるとさん

 三良坂と剣を交えたのち、ナインはその足で単身アメリカへと向かった。昔はヒコーキというもので十数時間もかかっていた日本・アメリカ間の往来も、今や太平洋トンネルを利用すればものの数時間でできるのだから科学さまさまである。
 無事目的地にたどり着いたナインの目に飛び込んだのは日本ではお目にかかれないほどの巨大な施設。広大という言葉を体現したかのような土地面積にそびえたつその施設は、まるで迫りくる宇宙人の襲来に備える基地であるかのよう。――マーシャル宇宙飛行センター。100年以上も前から存在する、最も歴史の古いNASAの施設である。
 しかし、今のナインにとってはその施設など道端に転がる石ころも同然であった。


 受付で指示された場所に向かうと、そこにはもう十人ほど人が集まっていた。一目見ただけで老若男女、様々な人種・職種の人間がここに揃っているのが見て取れた。頭の切れそうな奴に、同じ人間とは思えない図体の奴。さらには、明らかにカタギの人間ではないだろうという奴までいる。そのうちの一人、最も凡人だとナインが感じたアジア系の顔立ちをした男が、笑みを浮かべながら近寄ってきた。
「君、日本人でしょ? 俺はカジタっていうんだ」
 そう言ってカジタと名乗った男は右手を差し出し、「お前も名乗れ」と暗に訴えかけてくる。正直面倒だと感じたが、ここで名乗らない方が後々面倒そうだと考え、渋々答える。
「……サトウ」
「そうかサトウか! よろしく! いやあ、俺日本語しか分からなくてさ、心細かったんだよね。日本人のサトウがいてくれてよかったよ」
それから数分間カジタに質問攻めにされ、捲し立てられ、ほとんど会話の内容は覚えていないが、唯一覚えていたのはカジタが自衛官であるということくらいなものであった。
そろそろカジタの声が耳障りになってきたところで、スーツ姿の職員が次々と現れ、ナインたちに耳かけ式の無線のようなものを渡していった。それを付けてみると、辺りの雑音でしかなかった人々の声が意味を持った言葉として耳に伝わる。どうやら翻訳機のようである。
 翻訳機が全員に行き渡ったその直後、さっきまでざわめきが立ち込めていたこの場所に静寂が訪れ、ガタイの良い白人が喋り始めた。
「今回の作戦の指揮を執るアームストロングだ。細かい説明はその都度行う。まずは宇宙服に着替えてくれ」
 無表情でそっけない説明だとナインは感じる。自分も人のことは言えないわけだが。
 またもや職員が現れ、宇宙服を渡していく。よくテレビなどで見かける宇宙服とは全く異なっており、何枚も重ね着したかのような鈍くさいものではなく、シュッとしたスリムなものである。
「この宇宙服は今回の作戦のためだけに作られたものだ。『海』には様々な危険が存在している。そのため、動きやすさ、耐久性、その両方に優れていなければならないのだ」
 実際、宇宙服はとても動きやすいようにナインは感じた。しかし、生地が薄く耐久性に優れているとは思えない。
「我々が独自に研究し、編み出した特殊繊維でできている。耐久性は本物だ」
 そんなナインの不安をかき消すかのようにアームストロングは補足した。
「着替え終わったなら、早速出発してもらう。発射場へ向かってくれ」
 言われるがまま発射場へ向かう。そこにはメディアを通してでしか見られない代物が。この施設に引けを取らないほどの壮大さが鎮座していた。スペースシャトル。宇宙への渡航と言えば、遥か昔からこの乗り物と決まっている。
 カジタはそれを見るなり童心に帰ったがごとく騒いでいる。周りから白い眼で見られているのに気付いていないのは本人くらいなものであった。
 シャトルに乗り込み、中を案内される。武器庫なるものがあり、どんな武器でも自由に持って行って良いらしい。ナインはその中から目当ての日本刀を見つけ出すと、それを持ってシャトル内の席に座る。
「これから離陸準備に入る。各々シートベルトをしっかり付けてくれ」
 そうヘルメット内の無線から流れる。
「いやあ、遂に出発か……。ドキドキしてきたっ!」
 ナインの隣に座るカジタは相変わらずである。緊張感のない奴めと思うものの、えも言われぬ興奮のようなものをナインも感じていた。


「無事大気圏を突破した。これから月への着陸準備を行う」
 アームストロングの声がヘルメット内に響く。それと共に搭乗者たちの間に緊張が走る。流石のカジタもその例に漏れることは無かった。
 しかし、直後に突然の警告音。先ほどまで走っていた緊張はどこへやら。今機内に走っているのは戦慄である。
「着陸準備に移行できない……だと……」
 先ほどまであれだけ淡白だったアームストロングの声に焦りの色が混じる。
「このままだと、月に突っ込む!」
 大きな衝撃とともに視界がブラックアウトする。ナインと世界との繋がりが断絶された。


 まずナインの目に飛び込んだのは無機質な壁。三方がそれで囲まれていた。
「お、起きたのか」
 唯一壁で囲まれていない方から歩いてきたのはカジタだった。
「他に人は?」
 ナインの質問にカジタは無言で首を振る。
「迷宮、とは聞いてたけどよ。こりゃあ本物の迷路みたいだぜ。ほら、テーマパークとかでよく見るアレ」
「……ってことはまさか」
「ああ、お察しの通り。ここは……」




「『海』の内部だ」



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