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リレー小説
千葉大学文藝部で行っているリレー小説を公開しています。
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DATE: 2013/01/05(土)   CATEGORY: テーマ:月
リレー小説 六
1/05更新                 執筆者葛もちさん

シャトルが月への着陸準備に入る直前まで遡る。その時、アームストロングは地球上での出来事を反芻していた。

「今回の、作戦には賛同しかねます」
 アームストロングは、テレビモニタ越しの三人の人物へ意見を伝える。内容は、月の海に関する件である。理由を尋ねられたため、彼はそれを答えた。
「一つは、『海』の中にはレゴリスが見当たらない。また、重力、空気の酸素濃度が地球上のそれとほぼ等しい。私は、それに作為的なものを感じます」
 一息吐いて、言葉をつづける。
「そして、先遣隊からの連絡が約5日後には途絶えた点です。今では、生死すらわかりませんが……彼らに関する情報を解析してからでも遅くはないかと」
 NASAの極秘プロジェクトとはいえ、二の轍を踏むこと。なにより、殊更に人の命をないがしろにする真似は避けたかったためだ。
「それは、君の私見にすぎないだろう」
老年の男性が、怒気を孕んだ言葉を放つ。モニタ越しでありながら、射抜くような青い目。自然と空気は張り詰め、自身の手は冷たいにも関わらず、汗ばんでいた。
「君は、なにか勘違いをしてはいないかね」
 次いで言葉を放つのは、銀縁メガネのインテリ然とした男。
「これは、人類の偉大な一歩となるものに他ならない。多少の犠牲は目を瞑るべきだろう」
 その言葉に、唇を噛む。こちらを一瞥し、二人の男は通信を一方的に切る。
「なにが、人類の偉大な一歩だ。他国に先を越されるのを恐れているだけだろう」
 アームストロングは、言葉を愚痴る。
「そう言いなさんな、彼らも必死なんですよ」
彼に言葉をかけたのは、日本支部の那須野だった。二人は同期であるため、自然と雰囲気は砕ける。
「しかし、上の方々は不祥事をもみ消したがるものなんですね」
辟易といった素振りをしながら那須野は呟いた。
「どういうことだ?」
漠然となにかを感じた彼はモニタ越しに詰め寄る。
「実は、先遣隊のデータは既にまとめられているんです。それで、生物を確認できました」
「どういった生き物だったんだ?」
「それがですね……」
間を空けて焦らす那須野を半眼で見つめる。
「そんな眼でみないでくださいよ、恐いな。端的に言うと怪物……でしょうか。画像を送りますよ」
送られてきた画像には、緑色の膜を背景に棍棒を手にした人のような生き物が写っている。だが、顔の中央に大きな眼が一つであった。
「ちなみに、大きさは5mほどあるそうです」
その言葉に、深いため息が出ただけだった。
「……どうして俺に教えた」
しばらくした後に、口にしたのはそれだった。
「どうせ、近い内にわかることです。もっとも、オブラートに包んだ形になるとは思いますが……」
再度、ため息を吐く。ふと、気になったことを尋ねてみる。
「そういえば、君の選んだ生贄は誰なんだ」
「生贄とは、時代錯誤ですね。カジタというエリート。それとサトウという民間人です」
その言葉に、自然と顔が強張る。
「民間人……正気か?」
その問いかけに、那須野はニンマリとした笑みで肯定して言葉を続ける。
「ええ、正気です。彼は民間人ではありますが、腕は確かです。現代に生きる侍といったところでしょうか?」
「サムライとは、それこそ時代錯誤だな。」
そんな言葉を交わしながら、さらに情報を引き出そうと試みるが那須野にかわされていった。
「ところで、いいワインが入ったんです。よかったら、一杯やりませんか。」
 結局、その言葉に追求をやめて、彼はニンマリとした笑みを浮かべる。
「ぜひ頼む、そうだな……月から帰ったらやるとしよう。まだまだ聞きたいこともあるしな」


 そんな回想は、警告音により妨げられる。
「着陸準備に移行できない……だと……」
着地時点直前にまで、迫った時であった。機械類に不備はない。
なにかに、吸い込まれていくようであるため、着地態勢へと移行することができないのだ。
「悪いな、那須野。約束は果たせそうにない」
それが、アームストロングの最後の言葉となった。



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