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リレー小説
千葉大学文藝部で行っているリレー小説を公開しています。
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DATE: 2013/01/21(月)   CATEGORY: テーマ:月
リレー小説 七
1/21更新                 執筆者 河東皐月さん

『本部から1986-DSMR2へ』
『こちらDSMR2』
『先ほど、お前から緊急事態時の信号を当方が受信した。何があった?』
『……はい。排除対象の未確認物体と戦闘中の隊員二名を発見し、双方武器ロスト、隊員の死亡は必至と判断、援護攻撃としてパターンαを開放しました』
『懸命な判断だ。より効率的に対象を排除せよ』
『はい。隊員二名とともに新グループを結成しました。以後、行動を共にします』
『分かった。ただ、お前はあくまで観察者だ。その二名の隊員との共同戦闘が不可能なような事態になれば、そのときは……分かっているな?』
『……はい、マスター。プロジェクトの迅速な完遂のため、グループβを離脱、新たなグループ結成に尽力いたします』
『尽力ではない。死力を尽くせ』
了解、と発信した後、ミス・デイジーは本部との通信を止めた。ミス・デイジーの後ろにはカジタとサトウが続く。二人の間には、『海』到着直後とは違い、緊張が張りつめていた。いつキメラ級の怪物が出てくるか分からない。『気を抜けば死ぬ』、そんな武士道のような文言が絶えず、脳に、神経に、精神に、警告していた。

 「未確認物体発見。前方数十メートル」
空気が張りつめた。カジタは予備の銃があることを確認する。サトウは日本刀を握り直した。
「俺が奴をギリギリまで引きつける。そこまでくればコッチのもんだ。命中率隊トップの俺だ。狙ったら逃さないぜ。サトウさん、アンタ、銃は使えるか?」
「ガキの頃に、エアガンやったくらいだが……」
「ハハハ! 実弾とBB弾じゃあ全然違うぜ! 今後のためだ。近距離ばかりじゃ太刀打ちできねえ奴も出てくるかもしれねえ。練習あるのみだぜ。ほら!」
カジタは、ひょいと肩にかけていた小銃をサトウに投げた。サトウは、小銃を受け取り、ハンドガンサイズのものかと思っていたので、その大きさと形状に目を丸くした。サトウが渡された小銃を好奇な目で見ていると、銃口とは反対の端の方に”kazita”と白く書かれているのを見つけた。
「そいつは、俺が入隊当初から使っていた銃だ。地球だと、重量感があって持ち運びも容易じゃねえんだが、月ってのは面白いねえ。ここじゃあ片手で投げられちまうくらい軽いんだぜ!」
サトウは人の心が容易に理解できるほど器用な男ではなかった、が、カジタが言わんとしていることは、不器用なサトウでも理解できた。そんだけアンタを信頼している、と。
「……おっと、笑ってる場合じゃねえな」
サトウは視線を前方に移す。相変わらず遠くまで見渡せるこの不愉快な殺風景の中に、こちらへゆっくりと近づいでくる、一体の巨大生物が、いた。
「私が分析する限り、対象はキメラほどではありませんが、体長は……五,六メートル。ですが、飛行可能です。気を抜かないで下さい」
「「言われなくても分かってるぜ」」

「来るぞ!」
大きな図体から翼が現れた。翼を広げ、一回、二回と大きく翼を扇ぐ。ゆっくりと一行に近づき、周りを旋回する。その姿が、目に映った。孔雀のような羽をもち、胴体は薄緑と黄色が波打っている。まるで金の粉をまき散らしながら、優雅に飛び回る鳥のようであった。
「……綺麗だな」
サトウが思わず呟いた。
「サトウさん、ボケっとしてないで、援護してくれ! あくまで今は奴を引きつけるための弾だ。あんま弾を無駄にしないでくれよ」
サトウは、慣れない手つきながら、銃口をそれに向ける。ミス・デイジーも武器を銃に変え、それに向ける。まず、カジタが一発打ち上げた。すると、銃声に気づいたのか、素早い動きで頭をカジタに向け、突っ込んできた。
「ギリギリまで縮めて……。スリー、ツー、ワン! 今だ撃て!」
三名はそれ目がけ、射撃を集中させる。連射! 連射! 鳥のようなそれは、血しぶきを撒きながら数メートル前方に落下した。
「よし! サトウさん後は頼んだぜ!」
サトウは頭を縦に振り、腰から日本刀を抜いた。
「これでしまいだぁぁぁぁぁぁああ!」
サトウは鳥のようなそれの頭を一刀のもとに切り裂き、止めとばかりに頭に刀を突き刺した。
サトウはそれが息をしていないのを確認した後、ミス・デイジーとカジタのもとに向かった。
「素晴らしいです、お二方。あの物体はなかなかに手ごわい相手と分析していましたが、こうも早く排除することができるとは……」
「俺も、ここまでうまくいくとは思わなかったが……。アンタたちのおかげかな」
「いえ、私が撃った弾は五十四発。その半分は外れました。しかし、カジタの撃った弾は二百発を超えます。しかも命中率は九十五%を超える。数値からみて、私が今回の戦闘でさほど貢献していないのは明らかですが?」
「……いや、そういうことじゃないんだがな。調子狂うなあ全く。せっかく感謝してるんだからよ、あれこれ口出すもんじゃねえよ」
「そういうものなのでしょうか? 私には感情というものがインプットされておりませんので……」
「じゃあ、データにでも書き加えておくことだ」
ポン、とカジタはミス・デイジーの頭に手を乗せた。
 「なあ、サトウさん」
カジタは意を決した面持ちで、サトウに振り向く。
「アンタ、このプロジェクトに参加した動機って金のためだって、前言ってたよな」
「……ああ。それがどうかしたか?」
「それだけってのはおかしくないかね」
「お前に言われたくはない」
「ハハハ、違いないねえ~」
いつもの気の抜けた表情をしながら、カジタは笑う。
「このチームのため、ってのはどうだ? グループじゃなくてチーム、な」
「は?」
サトウはカジタの突拍子もない言葉に呆然とする。
「そのままの意味さ。俺さ、このチームは最強だと思うんだ! 向かうところ敵なしだろ!」
「まあ確かに……」
「金とかさあ、そういう自己満だけじゃあモチベーションあがらんっしょ。金のために死んだっていうより、仲間のために死んだっていったほうがかっこいいだろ~」
「お前、死ぬ気なのか」
カジタはこれまでの気の抜けたような表情から一転し、目つきを鋭くし、表情を硬くした。
「死ぬ気はない。死ぬ気で生きるさ。ただ、もし、万が一にでも、死ぬようなことあれば、自分のためにでなくアンタらのために死にたい」
今までに見たことのないカジタの真っ直ぐな目を見て、サトウはそれが冗談ではないことを悟った。
「カジタ。俺はお前が思うほど仲間思いの、精神の清らかな人間じゃない。金のためなら、何でもできる自信がある。お前を裏切ることも。だが、今、ほんの少しだけ、お前の言っていることも悪くないとも思ってる。……死ぬのは御免だが」
「ハハハ! それでこそアンタらしい答えってもんだ!」
 二体の怪物を倒した後、三名の結束は固くなったように思われた。
しかし、ここは月の『海』。常識の通用しない世界。物語はいよいよ終幕へと向かう――。


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